西日本新聞「県産品ノート」第56号(10月18日掲載)は、
福岡県民には、おなじみのおやつ。
「梅ヶ枝餅」です。
取材にうかがった組合長さんは、参道中程〜右手にある「かさの家」の不老さん。
40店舗の組合は、同様の製法で作ることを義務づけられていますが、
米の配合や大きさを制約されながらも、その中での独自性を出しているのだそうで、
実は、参道を1個づつ比較(試食)しながら食べてみるのも、
おもしろいなあと思ったわけです。
素材へのこだわり…。私としては、「かさの家」をおすすめします。
※掲載記事(修正前)は下記の通りです。
56 梅ヶ枝餅
今回は、福岡に生まれ育った方なら一度は口にしたことがある親しみ深い県産品を紹介します。
「梅ヶ枝餅」の歴史には、平安時代の菅原道真公にまつわる諸説があります。中でも多く語られているものとしては、近くの老婆(浄妙尼)が、食事にも事欠く悲惨な暮らしぶりの道真公を見かねて、軟禁された部屋の格子ごしに餅を差し入れする際、手では届かず梅の枝の先に刺して差し入れたというものや、道真の死を悼んで好物だった餅に梅の枝を添えて墓前に供えたというものなどがありますが、どれも道真公の大宰府配流にまつわる苦難をあらわす逸話がもとになっています。
そのような故事にならい、道真の墓所がある太宰府天満宮の参道では「梅ヶ枝餅」という名で売り出されるようになります。やがて、天神様人気が高まり、門前町が形成。江戸時代には、さいふ参り(太宰府参拝)の土産といえば「梅ヶ枝餅」と言われるほどの名物土産にまで発展を遂げました。
ご存知の方には当然ですが、「梅ヶ枝餅」とはいうものの、梅の味や香りがする訳ではなく、実際には小豆餡を薄い餅の生地でくるんだ焼き餅です。温かくて香ばしい米の香り。外がさくっと中がもちもちっとした歯ごたえ。小豆餡と餅の絶妙の相性には、とても素朴な懐かしい味わいが残ります。「道真公ゆかりのこの味には、1100年の伝統があります。日本人ならではの餅の文化を、その技法とともに次世代に継承していきたいですね。」とは、梅ヶ枝餅協同組合の不老安正理事長。本家に相当する店舗は現在のところ不明ですが、“正式な” 梅ヶ枝餅には、その大きさ(直径75mm、厚さ20mm)やブレンド比率(もち米8:うるち米2)、組合への加盟など、類似品を許さない厳格な規定があるそうです。その目印は、出来上がると真ん中に入る梅の刻印。規定外を認めない厳しい姿勢があるからこそ、伝統の味を変わらずおいしく食べることができるのです。
「焼きたてですよ〜」お休みの日ともなれば、参道や茶店のあちこちからやさしい声が掛かります。それぞれの店頭で焼き上がる手際の良さを眺めながら、焼きたてのホクホクをひとくち。色づく天満宮の景色を愛でながら、というのが、ご当地ならではの楽しみ方なのだそうです。
取材協力: 梅ヶ枝餅協同組合 092-925-1899