多くの公共施設では、建設当初に想定されていた使われ方と、現在の利用ニーズとの間にズレが生じ、空間自体が時代に合わなくなってきています。こうした変化に向き合いながら、私たちは指定管理事業での日々の運営だけでなく、イベントやプロジェクトなどの公共事業を企画・実施する中で、実際の利用の様子を観察し、その場所にふさわしい機能や使い方を考えながら「空間を今の当たり前に合わせて整え直す」デザインの取り組みを行っています。
近年の例では、若年層利用者の携帯ゲームなどをする溜まり場となっていたデッドスペースをチャイルドスペースに変更し、元々のチャイルドルームを利用者ニーズの高い自習室にするなどを行いました。こうした変化には、建物の設計だけでなく、家具や利用のしくみなども含めた、総合的なデザインが求められます。一つの方針のもとで空間や運用を丁寧に整えていくことで、以前は横ばいだった来館者数が大きく伸びるなど、目に見える成果も生まれています。
また、空間が変われば、そこでの「案内のしかた」も変わります。
上の事例では、施設内のサインをすべて見直し、「ただ配置がわかる地図」ではなく、「初めて来た人でも直感的にわかるマップ」へと工夫しました。
また、文化財や世界遺産の案内などでは、外国語にも対応できるよう、わかりやすさと品格を両立したサインづくりを目指しています。
多言語対応についても、紙だけでなくWebと連動することで柔軟に運用できる仕組みを設計し、多様な背景をもつ来訪者にとって、親しみやすく、理解しやすい空間になるよう工夫を重ねています。
こうしたデザインは、使いやすさだけでなく、文化財そのものの価値や魅力をより伝えていくための土台にもなると感じています。