#ソーシャルデザイン

信仰の記憶を未来につなぐ、やさしいコミュニケーション

Creating Structures that Promote Dialogue

人々の記憶の中に静かに息づいてきた、信仰の想い。その大切な歴史をこれからへとつなぐことは、とても重みのある役割だと感じています。
私たちは、その拠点となる施設の監修やブランドづくり、そして人と人とのつながりを生み出すしくみのデザインに取り組みました。
世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の一部、平戸市春日集落には、目に見える信仰の形は少ないものの、暮らしの中に根づいた歴史があります。このプロジェクトでは、集落の中にある古民家を改修し、地域の文化を伝えるコミュニケーションの場として再生することを目指しました。そしてその場所を、地域のおばあちゃんたちが語り部として運営していく――そんな温かなかたちを実現するために、私たちは空間と仕組みのデザインを担いました。

施設の愛称は、市民から公募した案の中から「語りを通じた交流」をテーマに、『かたりな』という名前に決まりました。このようにブランディングも、地域の思いに寄り添いながら進めていきました。
来訪者には、おばあちゃんたちが手作りのお漬物やお茶でもてなしてくれます。その語りだけではなく、あたたかなおもてなしが、心に残る思い出になっているのです。今では、そのやりとりそのものが、この場所ならではの魅力となり、多くの人の心をつないでいます。
この取り組みを通して私たちは、地域を元気にするコミュニケーションの仕組みは、仕掛けだけでなく、想いをもって動かす人の存在があってこそ、本当の価値を生み出すのだと実感しています。