福岡市博物館は、国宝「金印」や黒田家ゆかりの品々をはじめ、多くの福岡市民の皆さんから寄贈・寄託された資料を大切に調査・保管・公開してきたミュージアムです。開館から30年を迎えた頃、太宰府に九州国立博物館が開館し、福岡市美術館も大規模リニューアルに踏み出すなど、周囲の環境が大きく変化するなかで、福岡市博物館も「次の時代の姿」を模索していました。
私たちは、その未来像を職員の皆さんとともに考え、共にかたちにしていくブランディングの仕事に関わってきました。
出発点は、常設展示室のはじめての全面リニューアルでした。そこでは、これからの時代にふさわしい新しいロゴなどのVI(ビジュアル・アイデンティティ)の制作をはじめ、これまでとは異なるアプローチでの広報活動や、ユニバーサルデザインを取り入れたサイン計画など、空間設計まで含めた幅広いデザインに取り組みました。こうしたプロセスを通して、福岡市博物館が市民にとってどのような存在であるべきかを考え、公共施設の役割そのものにも深く関わることができました。
その後も、博物館の中心的な情報発信を担う季刊誌『Facata』の編集・デザインを担当するほか、市民から新たに寄贈された文化財などを紹介する「新収蔵品展」の情報デザインも手がけています。これらは、博物館の基盤となる価値を、分かりやすく、魅力的に伝える役割を担っています。
また、メディアデザインにとどまらず、地域との関係性を育むワークショップや、博物館によるアウトリーチ活動のサポートなどにも積極的に関わってきました。
このプロジェクトの大きな特徴は、どのフェーズにおいても、職員の皆さんと協働しながら進めていることです。市民の視点と専門性、その両方を大切にしながら進めるデザインには、私たち自身も大きな価値を感じています。